2009/10/11

20XX年の建築原理展

銀座INAXギャラリーにて『20XX年の建築原理展』最終日にすべりこんできました。

本は読んでいたのですが、展示ではさらに多くのスタディ模型が順に並んでいました。そのスタディ(作業量)の多さについて、単純に本の内容に比べて「こんなにやっていたんだ」と感じさせる量で、同行者も同じ感想。プロセス本でありながらスタディの量を強調して掲載しない、掲載案を選別している、とはどういう編集の意図があったのでしょうか?本の質を高めるためにスタディ案を厳選する必要(似たような模型も少なくないですし)があったのか、展示とのギャップを演出(本→展示の場合は有効でも展示 →本の場合は、、?)することで新鮮さを与えようとしたのか、途中の議論を重視してあえて時系列的なスタディプロセスを表現しなかったのか?少なくとも本→展示といった僕の場合は非常に楽しめましたが。予想を上回る驚きをもたらす展覧会の実現とはそう簡単でないはずだし。

ともあれ、会場では平田晃久案と藤本壮介案の模型が時系列的に順に並んでいるのですが、両者の違いが興味深かったです。

山、ビルといったメタファーを使いながら、常に敷地地図と一緒に模型を作成して都市におけるインパクトを模索する藤本。ほとんど最後まで敷地模型なし、本体の形態の原理を追求する平田。それでいて最後には1/100の大きな模型作って敷地外はほとんど省略する藤本と、1/200で敷地外のかなりの範囲まで表現する平田。案の進め方も、平田案がピースの集積とチューブの集積で線形的に発展するのに対し、藤本案は、細長いビルの集積、斜めに密集するビル、イソギンチャク型、入れ子状の山、ポーラスな積層の山、といろいろなアイディアをトライ&エラー。

建築生成の原理を発展させようとする平田と、都市に対するインパクト創出の藤本という対比に彼らの設計スタンスが現れていたように感じます。ただやはり、このプロジェクトの二つの軸となる「建築の原理」と都市に対していかに建築を考えるべきかという「建築生産の原理」との乖離は免れていない。これは案が面白いから余計にそう感じるとも言えますが、展覧会では特に前者よりの印象。普通の人が見て「これは奇抜だけど、、よい!」と言うにはまだハードルがありますね。これはみんなの課題でもあり。


追記:本書(企画)の編集協力のmosakiさんに聞いてみたところ、プロセス本を作っていた段階(毎月建築家が案を出してくる段階)で既に、スタディが選定され、絞られていたとのこと。彼らにとっても展示の時に見た事のなかった多くの模型が出て来たと仰っていました。つまり、案生成のプロセスにおいては何を出すか、そこでそれぞれの建築家としての選定があり、最終案へと進むという、リアルなプロセスがドキュメントとして本になっており、展示ではそれらを振り返った時に裏から出て来た「プロセスのプロセス」としての模型が再編集されたメタプロセスとなって展示を構成していた、といったことですね。そういった二段階のプロセスの提示であるという、ドキュメント企画としては極めて興味深い見方が出来る展覧会でした。見逃した人は本を熟読すべし。