2009/12/11

千葉学「大多喜町役場コンペ」講演会











@INAXギャラリー 建築家フォーラム


建築家フォーラム千葉学さんの講演会を聴講してきました。

前半は町役場コンペ案の背景としてのオフィスアーバニズムについて。過去のJAオフィスアーバニズム特集(阿部仁史+曽我部昌史+千葉学+小野田泰明)の紹介と九州に竣工した「子供の城」の紹介。後半は大多喜町役場のコンペとその後。以下要約(メモ)です。

ソニーの新しいオフィス、メディアが変わることでオフィス空間も変わるだろう、という前提での提案。もともとミースの均質空間からほとんど変わっていないという問題意識のもと、オフィス空間に興味を持っていた。普通(最近では少し高くなっても)天井高2800、窓からの距離も(最近では)長くて20mくらいの奥行程度とされるが、オフィス100mキューブというの異例のプロポーションでの提案。

コアの周りにフロアがあるという支配的なツリー状モデル、それを変えたい、都市空間のモデルに近づけたいという欲求に対して
・床をなるべく広くして(メガフロア)・多方向からのアクセスが可能なもの・たくさんの使われ方(貸し方)ができるもの
ということから天井高の高いメガフロアを積層させるという解答に至った。

当然出るであろう批判材料である、空調が大変、コストがかかる、という懸念に対して詳細に技術的な裏付けもやっている。排熱を上に集めることで居住域の空調はそれほどロスがない計画が可能とのこと。さらに床面積に対する外壁率が低いため、相対的に安くできる。結果として
・経路の選択性・ツリーでない構造・都市の中に下町、山の手ができるような不均質性の獲得
が豊かさを生むのではないか。

九州「子供の城」
屋内に遊び場がなかった。子供はどこでも遊びを開発することができるため、プログラムから建築を計画するということができないもの。コンペで勝ったのにも関わらず8棟の分棟を否定され(笑)1棟にした。屋根が起伏を繰り返していろいろな場所を作る、全体が分棟のように見えるひとつながりの空間を作った。プランと整合性があるわけではない、多様な屋根(様々な四角いヴォリュームが)を作る。多様な場所をつくるために、屋根のみに集中したデザイン操作を行っている。

働き場所も子供の場所も同様に、プログラムから導かれないものとして計画しなければいけない。それによって屋根だけのデザインをしたり床だけのデザインをしたりした。そのような建築-プログラムの関係を考えるきっかけがあり、その延長上で大多喜町役場コンペを考えた。

今井兼次設計の大多喜町役場増築コンペ
大多喜町を詳細にリサーチし、特に町屋がきちんと残っていることに特に興味を持った。そんな町の庁舎(見に行った時には1月、寒い)を実際に訪れてみると、断熱材もなく、寒く、コンクリートなども老朽化しており、職員の方々も膝に毛布を掛けたりストーブを炊いたりしているのを目の当たりにした。普通だったら壊して建て替えようとなってしまいそうなところだが、そのような状態にも関わらずそれを残そうとしている町の態度に感銘を受けた。

また、今井兼次がガウディ研究をしていたこともあり旧庁舎(同一敷地内)装飾的なところが多い。そのような空間性も50年愛され続けたものであるということにつながっているのではないか。象徴性と普遍性。そのように50年間保存されたもの、を今後50年活かせるように、古いだけでなく新しいもの、しかし将来古くなることも考えた関係性を提案した。

その根本として、ジョンソンワックス本社ビルのように、「オフィスのフレキシビリティ」と柱のみの造形による「象徴性」を両立できるようなものが提案したかった。それで1次は屋根を提案するということに集中する。1次を通ってから様々な屋根のスタディをした。町のシンボルとしての5角形を使うことから始まり(1次提案)、庁舎の構造である門型のフレームだけ(オーソドックスタイプ)を提案したりする。いろいろなタイプの屋根をスタディ。結果として正方形プランに対して45度にかかる2方向の梁を作っていった。グリッド上の梁ではなく、少し角度をつけるだけで影が多様になる、ということに気づく。その後構造体(梁)のスケールの密度などのスタディをしていき、梁方向について梁のレベルを変えることに。そして最終的に構造の合理性なども加味して45度方向に梁を掛け、大梁の上に小梁(90度回転)という屋根に行き着く。恣意的につくるだけでなく合理性を考えた末。2次プレゼン段階にそういった空間を作りたいというプレゼンをした。

「大多喜に重層する時間と空間」というタイトルでプレゼン時のパワーポイント(1/100くらいの部分平面図とそこでのアクティティ、空間のイメージパースなどがセットになったプレゼンはわかりやすい)を作成。

プレゼンは
1「冗長性と象徴性」というキーワード
2本庁舎の一方向性(門型フレームの長方形ヴォリューム)に対峙する増築棟は2方向性を持つ正方形ヴォリュームの提案
3高い天井高の象徴的な大屋根の増築棟の空間性のアピール
4屋根(現された梁)の作る空間性と、構造設備の合理性
5そこで行われる多様なアクティビティ
6大多喜町によく残存する町屋の屋根(部分的に小屋組が見えていたり、屋根が生み出す多様な空間性)との類似の指摘
という流れ。

5ヶ月くらいやらねばならないコンペだったので命がけだった。4月末に結果が出て今は実施設計の中頃という段階。コンペ案の見直しとスタディをずっとしてきたような状態。実施に入っても未だに屋根の空間のスタディをしている。さらに話し合いで議場、役場など機能の再配置をしなければならず、使い勝手、リクエストによってプランが大きく変わっている。

構造的には門型のフレームが重層して出来ているという形式を守るために柱と耐力壁を分ける、という提案。大梁はねじれに耐えるためにボックス型の鉄骨梁、その上の小梁はH鋼に木を抱かせたもの(座屈防止にも効いている)という構造、屋根はフラット+トップライトという方向性でスタディをする。トップライトを直行させると屋根全体が斜めになる、45度にすると2方向に樋が回る、大梁のレベルを変えず屋根勾配だけを変えるかなど検討した結果今のところ大梁ごと傾ける勾配屋根に、などなど。というのを未だに延々とやっているので決め方がよくわからなかったが、さんざんスタディをしていたのでだんだん見えてきた状態。


古谷:千葉さんの設計のプロセスが見れて驚いた。想像の3倍くらいのスタディがなされている。コンペ時(古谷は審査員)審査員には大多喜町の関係の方も多かったが実は圧勝だった。仮に床はフラットであっても天井(屋根)を集中してデザインするというコンセプトにオフィスアーバニズムなどのバックグラウンドと連関が示されていて展示として完成度が高い。同時に新しいものが加わることで古いものだけではなしえなかった全体像を提示できたということがよかったと再確認したが、新旧庁舎の対峙はどれほど意識したのか。

千葉:増築部分はおおらかな空間がつくれればよい。旧庁舎の門型フレームというボキャブラリーを使いながら細長い平面形の旧庁舎だけでできないものということで正方形の平面を割と早い段階で決定した。が、対比を明らかに意識したわけではない。

古谷:確かに他の案でも正方形は多かった。今回は通常のコンペに比べて1次の次に5社による2次(A1-2枚)を設け、設計の時間を与えようとした。そうしたら千葉さんの屋根は最初(1次)は大多喜の5角形の紋章を屋根に使うと言っていたのに、それが2次ではあっさり格子梁に変わっていた。1次-2次のコンペの段階での進め方はどうだったか?

千葉:やっているほうは長くて苦しい。しかし考える時間が長かったのはよかったとは思う。紋章ではなく(1次で言ったことを2次でやらないということは)格子梁にすることは苦渋の決断だった。しかしダイレクトなシンボリズムは正直どうかな、というのもあったし、5角形は難しく、構造の合理性にたどり着かないと思ったのもあり、変更するに至った。2次提案の時間はほぼ屋根のスタディに費やした。

古谷:近年本格的なコンペがなくなり、簡単なイメージで議論してプロポーザルで選ばれることがほとんどになった。1次のときに出したものしか2次に使えない、という類の(よくある)レギュレーションが実は思考の時間を狭めているのではないか、という問題意識がある。つまり1次にぱっと考えて出したものが通ってヒアリングまで行ってしまうと、深く吟味することなくそれをやらねばいけない状況になっているのではないか。ということで1次はあっさり、2次で5社を選んでから時間を与えてディベロップしていただく、というこのコンペのやり方(2次選出後A12枚を提出し、その後プレゼンというやり方 < 最近の主流は1次で提出したものを選び、それをもとに追加資料なしでプレゼンする)を設定した。



以上、講演メモです。メモなので正確でない部分、興味ないところの恣意的な省略はお許しください。
個人的には屋根に集中するがあまりのファサードの不在(役場の顔として)と、屋根と門型フレームというボキャブラリーを両立させることによって屋根も門型も目立たなくなる問題(つまり屋根なら大屋根が張り出した構造でないと内部しか屋根の恩恵を享受できず屋根としての存在感が薄まる、門型は屋根と構造壁などが必然的に存在することでその価値が把握しにくい)、などが気になった点でしょうか。それはともかくスタディ過程を詳細に追うことができるプロセス派には欠かせない展示+講演会でした。

2009/12/08

中国ネット規制

約1ヶ月の香港滞在を終え、只今帰国中、トランジットの台北空港から書き込んでおります。

香港のなにがしかはいずれ気が向けば書けるかもしれませんが、、、只今アクセス規制問題を体感しております。行きのトランジット時には空港からツイッターにアクセスすることができましたが、今は全然つながらないんです。

試しに他のものも試してみたところ、Twitter(いくつかのクライアントソフトもダメ)、Youtube、Facebookはつながらず、意外なのはAmazonもWikipediaもダメ、、、しかしニコ動、MixiはOKでした。日本語だからかな?

台北・香港ともに空港の整備はかなりよく、ネットもFreeで超高速、Yahooとかgoogleも今のところ大丈夫です。中国では今夏いろいろつながらなくて困ったものでしたが、香港は大丈夫で台湾はダメというのもいまいち納得が行かないところです。

とりいそぎメモがてら12月8日現在の報告まで。
とかぶつぶつ書いているとここもアクセス禁止になったりして笑。