2010/04/20

歌舞伎の黒子/お決まり/静止画的

昨日、4月一杯で改修のため取り壊される歌舞伎座にて、お誘いをいただいたので歌舞伎を鑑賞してきました。なんと高校生の時ぶりです!つまり歌舞伎にはまったく疎いのですが、そのピュアな状態の素朴な発見・感想を記しておきます。

・静止画的画面構成を支える黒子
とにかく華やかな歌舞伎の舞台、座っている演技でも半座りのような「キメ」の座り方を維持するために、座りのポジションの役者さんにはすかさず黒子が椅子を持ってセットします。そうして迫力のある座りの演技(実際には空気椅子に近い)を可能にしているのと同時に、無駄な動きの一切ない画面の演出につながっているようでした。

・「お決まり」という意味論的なお約束
太鼓の音色や小道具の使い方、役者のふるまいなど、細かいディテールが各々様々な意味を持っており、ぼんぼりが出たら夜を表すとか、この音は重要な来客を表すとか、
同じように、黒子は見えないというのがお決まりのルールですが、実は黒子ではない普通の補佐の人もいるようです。どう使い分けているのか(ただ演目によってなのか)わかりませんが、黒子よりはその存在を主張しているように思えます。そして演技に関係が無いときには後ろを向いて存在しない、ということをアピールしているのです。

・フラットな照明
ライティングがほとんどなく、劇的なスポットライトなども一切使用しておりませんでした。フラットな光が舞台を一様に照らす感じ。解説での「昔はライティングなんてできなかったから」というのに納得ですが、この演出された「劇的さ」を嫌う感じ(歌舞伎は演出の極地とも言えるのですが逆に)に日本的なるものを感じました。

・急勾配の一体感
おそらく建替えの遠因にもなっている急勾配で非常に狭い客席。2F 3Fの席は花道が見えないので決してよいとは言えないのですが、とても急勾配な傾斜が逆に劇場の一体感を生んでいたように思えました。座席幅は420、前後の間隔は600くらいしかないのではないか、という現代にはそぐわない狭さですが、それも味で、とはいえどの席からも舞台だけはきちんと見えているようでした。

というように、まさに静止画のような平面構成的な舞台を堪能してきました。同時に黒子という存在(その意味論も含めて)にとても興味を持ちました。数回の鑑賞で日本性うんぬんを語るにはまだ早いですが、役者への掛け声や、拍手のタイミングなども含めて、歴史の中で定着した「日本のルール」が生んだ素晴らしい芸術だと思いました。ってちょっと大げさか笑?見た中では特に「連獅子」が話、笑い、盛り上がり共によかったです。