2009/08/02

街としてのゲッティセンター

数日前からアメリカ西海岸に来ています。今日はゲッティセンター(リチャード・マイヤー設計)を見学しました。リチャード・マイヤーの集大成と言われる作品であり、石油王ゲッティの膨大なコレクションを、ロサンゼルスを一望できる広大な丘一帯に展示した巨大美術館。

まず、車でハイウェイからアクセスしようと走っていると、EXITの標識に「GETTIE CENTER」と出るのに驚いた。その丘には他に何もないこともあるが、「街」と同レベルの扱いとなっている(google社も道に「google」の標識があったが、ハイウェイの標識とは、、)ほどの存在感で、門を入ると地下7層の駐車場がある。そこで車を停め、エレベーターで地上(表示には「パーキングレベル1-7」と「トラムレベル」しかないのがよい。下手に「2F トラム」とか書かれていない )に上がるとトラムで丘の上の美術館まで10分弱。このアクセス方法は、丘の上に巨大美術館があるということを嫌でも意識するため、悪く言えば「権力の誇示」であるが、よく言えば美術館が置かれた「文脈の俯瞰視の提示」である。単純に気分は盛り上がるので、アミューズメントとしては正しく機能していた。

もう一つ驚いたのが、完全に無料(駐車場は15ドルとやや高だが)であって、現在でもかなりの来館者があること。子供から老人、外国人までかなりいろんな種類の人がいたが、まるで公園に来るように、賑わっている。展示は割と古典的なものが多い。人は展示室内部にももちろん多いが、その外の中庭や広場(多種の広場が設計されている)に人が多い。これだけのコレクションを無料で開放することもすごいが、丘の上(ロス中心部から30分程度だが周りには何もなし)の美術館にこれだけ人が集まるという文化的底力を感じざるを得ない。本当に、丘の街というような存在で、市民や観光客が休日に一日かけて遊びに訪れるような場所になっていた。

建築としては集大成とは言え、既知のボキャブラリーで作られているため、空間構成は気持ちがよいが新鮮な感じはしない。上質なリゾートといった感じ。ただ、すべての建築の壁や床や中庭も含めて、800角の白いパネルと、削り出しのトラバーチン、磨かれたトラバーチン(に加えて4割の200角のトラバーチンを細部にあしらう)といった同じ寸法体系でつくりながら素材を変えていくという手法はよかったと思う。マイヤーは丸などの幾何学も入れたり環境に合わせて軸を振ったりしているけど、現代的なアプローチとしてはそのことに集中できるように余計なこと、主題をぼかすことはなるべくしないだろう。そもそもゲッティセンターの設計のこの操作を主題と読んでいるのも意識的な誤読である。でもそのようなコンセプト偏重にしたときに、このような「リゾート」的な、誰もが心地よいと感じる豊かさが出せるかどうかは難しい。